「二世帯住宅」vs「近くに買う」どっちがおトク?
「二世帯住宅」vs「近くに買う」どっちがおトク?
自分の住まいを持ちたいと思ったとき、多くの人は親の家のことを考えるでしょう。親と同居をするのか、近くに住むのか、それとも遠く離れたまま暮らすのか…。
二世帯住宅で同居をする場合や近くに買う場合には、普段の生活で親の世帯と助け合ったり緊急時に対処できたり、あるいは孫の面倒をみてもらえるなど、遠くに住むよりもメリットが多くなります。
それでは、二世帯住宅を建てて同居する場合と、親の世帯とは別に近くで買う場合とではどう違うのか、それぞれの特徴を考えてみることにしましょう。
もともと親が所有している家に同居をするケースは別として、親と子が半分ずつ費用を出し合って二世帯住宅を持つときでも、近くに別の住まいを買うよりは経済的です。有効な居住面積が単純に2倍になったとしても、いくつかの住宅設備や庭、車庫などを共通にしたり、共用スペースを設けたりすることでコストダウンが図れます。
また、親がすでにある程度の広さの土地を所有していれば、そこに子の全額負担で家を建てるケースも考えられます。このような場合でも土地代が不要になることで、負担総額が少なくて済むでしょう。とくに土地代が高い都市部ほどそのメリットが生じます。ただし、税金面では土地も建物も共有にしておいたほうが有利なため、このようなケースでは土地と建物の権利をそれぞれどうするのか検討が必要になってきます。
いくら親子だとはいえ、お互いのプライバシーを保ちたいケースも少なくありません。同じ屋根の下に二世帯で住めば、日常生活において過度の干渉も生まれがちですが、近くに住んでいるときには、必要なときに行き来をし、会いたくないときには少し距離をおくこともできます。
水道光熱費や食費など生活コストの負担がどちらかに片寄ることがなく、適度な独立性を保てることも近くに買う場合のメリットでしょう。
二世帯住宅でも、玄関からキッチン、リビング、浴室なども含めてすべてを分離した「完全独立二世帯住宅」にすれば、お互いのプライバシーを守ったり、経済的な負担をすべて区別することもできます。ただし、このときは建築コストが少し割高になることや、将来的な可変性に制約を受ける場合があることも考慮しなければなりません。
親が高齢になって日常生活の介護や看病が必要となったとき、近くに住んでいても様子を見に行くことはできますが、それが毎日のことになれば一緒に住んでいるほうが安心です。
また、親に突発的な事態が起きたとき、すぐにその異変に気付きやすいのも二世帯住宅でしょう。普段の生活において常に相手の気配を感じられる安心感は、近くに住んでいるだけではなかなか得られません。
たとえ親子でも、仕事が違うだけでなく、それぞれのライフスタイルも希望する住まいも、さらには住みたい路線やエリアも異なって当然です。
二世帯住宅だとどちらか一方、または双方が妥協をして歩み寄らなければならないケースも少なくありませんが、近くに買うのであればお互いの希望を叶えられる可能性が高いでしょう。一方がマンションを選択することもできますし、車での移動を前提に考えれば異なる路線での「近居」も実現しやすくなります。
二世帯住宅で親と同居をして将来に両親とも亡くなったときに、その家がどうなるのかを考えておくことも必要です。広い家を持て余しても、買い換えや建て替えで対処できれば問題はありませんが、意外と多いのが相続時における兄弟姉妹間の争いです。
もし親の残した財産が主にその二世帯住宅の持分だけで、他の財産がほとんどなかったとすれば、あなたの家族が住んでいる家は相続によって兄弟姉妹との共有になりかねません。
親の家の近くで、あなた自身の単独名義(または夫婦の共有名義)の家を買っておけば、このような事態に陥るリスクを避けることができます。
離れて暮らすよりもメリットの多い二世帯住宅や近居ですが、いずれの場合でも親の立場、子の立場をお互いに尊重して、良好な親子関係を保つことが大切です。もっともそれ以前に、相手が夫の親なのか、妻の親なのかという問題もありますけどね。
- 子育て、孫の面倒を見てもらいやすい
- 祖父母が近くにいることで、孫の教育面に良い影響が出やすい
- 親の介護や看病が必要なときに行き来しやすい
- いざというときの助け合いができる
- 気軽に話し相手になったり、顔を見に行ったりできる
- 孫の運動会や誕生日などのイベントで集まりやすく、楽しく過ごせる機会が増える
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二世帯住宅
- ○ メリット
- ・ 購入または建築のトータルコストが割安になりやすいほか、車などを共用にすることもできる
- ・ お互いの生活の気配を感じることによる安心感がある
- ・ 親の健康面での異常などに気付きやすく、緊急事態が生じたときにも対応しやすい
- ・ 一方が数日間留守にする場合でも、不審者への対処がしやすい
- ・ 日常生活での助け合い(外出中に宅配便を預かってもらう、洗濯物を取り込んでもらうなど)が容易
- × デメリット
- ・ 双方のニーズが一致せず、物件選びで妥協が必要なこともある
- ・ プライバシーは保ちにくく、お互いに干渉しがちな面も生じる
- ・ 水道光熱費や日常の出費の負担がどちらかに片寄ることもある
- ・ 祖父母が孫を甘やかし過ぎたり、干渉が過度になったりすることもある
- ・ 相続のときにトラブルが生じるケースもある
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近くに買う
- ○ メリット
- ・ 自分たちのニーズにあった物件を選択できる
- ・ 程良い距離感で、お互いの独立性やプライバシーが保てる
- ・ 生活のリズムや就寝時間が異なっても気兼ねをせずに済む
- ・ 友人を家に招く場合など、親世帯への配慮は不要
- ・ 相続のときに問題が生じるケースは少ない
- × デメリット
- ・ どちらかに緊急事態が生じても気付きにくい
- ・ 日常的に介護などが必要となったとき、距離によっては行き来が面倒になる
- ・ 急用による助け合いなどは難しい場合もある
- ・ 住まいの取得〜維持コストは、二世帯住宅の場合に比べ割高になりがち
- ・ 毎日のように子育ての支援(幼稚園への送り迎えなど)をしてもらうときには、二世帯住宅の場合よりも不便
いかがでしょうか?「二世帯住宅」と「近くに買う」あなたならどちらを選びますか?
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平野 雅之(不動産コンサルタント)
個人向け相談業務などを取り扱う不動産コンサルタント会社「リックスブレイン」代表。20年余りにわたり、東京都や神奈川県を中心に不動産媒介業務(売買)に携わる。取引実務に精通する専門家の立場から「現実に即した実践的な情報」を、消費者に分かりやすく解説している。
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