「売る」vs「貸す」今ならどっち? 【OCN不動産】

「売る」vs「貸す」今ならどっち?

「売る」vs「貸す」今ならどっち?

前回の『「売る」vs「貸す」どっちがおトク?』では「売る」か「貸す」か判断するポイントを挙げてみました。今回は今の時期に「売る」と「貸す」どちらにすべきなのか、昨今のニュースなども踏まえ考えてみましょう。

今の時代に所有物件を賃貸にするのは危険?住宅空き家率は過去最高

総務省の2008年10月現在の住宅・土地統計調査結果によると、全国の総住宅数は2003年の前回調査比6.9%増の5759万戸で、このうち空き家は14.6%増の756万戸と、いずれも過去最多だったという発表がありました。総住宅数に占める空き家の比率は0.9ポイント増の13.1%でやはり過去最高。10軒家があったら、そのうち1.3軒は空き家だというのですから、尋常ではない数字といえるでしょう。
ちなみに国土交通省のデータによると、賃貸住宅全体の空き家率は1988年の13.3%から上昇を続け、2003年には17.6%まで上昇し、単純に民間の賃貸だけに限定すると2割を超える数字となっているとのこと。

実際に首都圏の新築賃貸マンションなどでも、3〜4月の繁忙期に合わせて、事前に募集を開始し、建物を完成させたものの、数カ月経っても空きが目立つ状態の物件もあるようです。

人口減少は加速し、今後空き家はますます増加

今後日本における、少子化による人口減少は加速するものとみられ、東京都・沖縄を除き、すべての都道府県で人口減少するという予測データも公表されています。
政府は200年住宅構想などをうたっていますが、2009年に発表された1.37程度の日本の出生率では、200年後には日本の人口は800万人となるそうです。
国の少子化対策が功を奏さない限り、今後の賃貸住宅もこれらの少ない牌(パイ)の取り合いになることは容易に予想され、賃料下落リスクや空室リスクを負うことになります。
加えて、不況による悪質滞納の増加や昨今は賃貸住宅の収益に影響を与えかねない判例もでてきています。

不況で増加する悪質な賃料滞納

家賃保証業界によると、数年前まで1割にも満たなかった家賃の滞納率は、ここ最近では2割前後にまで上るとみられています。
とくに昨今の雇用不安や不況の影響で、数カ月ごとに引越し、引っ越すたびに家賃を踏み倒す悪質滞納者も増え、業界も対応に苦慮しているようです。家賃を踏み倒された場合、その回収には時間と労力とお金がかかります。
国土交通省によると、家賃の滞納が始まって、家主が訴訟を起こし、判決が確定するまで平均8.5カ月の期間を要し、判決に基づいた強制執行にかかる費用は平均50万円とのこと。実際に私自身も、仕事上で家賃滞納の裁判や強制執行を経験しましたが、想像以上に手間と時間がかかるうえ、裁判や強制執行手続きは立会いを含め心理的負担もかなり大きいものです。

更新料は無効という判例も

一方で、更新料に関してもニュースなどで話題にのぼっています。
賃貸住宅の契約更新時(一般的には2年ごと)に家主が賃借人に更新料の支払いを求めるのが通例となっていますが、これに関しては過去にも裁判などで数々争われてきました。過去の裁判の判例でいうと、すべて更新料を認めるという内容のもの。ところが先日これを覆す判決が下されました。
賃貸住宅の契約更新時などに家主が更新料の支払いや保証金の敷引(しきびき)特約を借り主に強いるのは消費者契約法違反だとして、京都府長岡京市の20代の会社員の男性が家主に計46万6000円の返還を求めた訴訟で「更新料などを借り主に負担させる合理的理由はなく、契約は無効」として全額返還を家主に命じたという判決が下りたのです。もちろん更新料に関しては、事前に重要事項説明や契約書には記載してある内容です。
もちろん消費者の立場で考えると大変ありがたくはありますが、不動産所有者の立場で考えると、従来のような収支換算での利回りは見込めなくなる可能性があり、原状回復にかかる費用などもコストとしてシビアに見ていく必要に迫られそうです。

「貸す」と「売る」はサキヨミ力が必要

最後に、「貸す」と「売る」の選択に関してはエリア・立地条件やそのときどきの地価の状況、経済情勢などとともに自分自身のライフスタイルや将来設計なども絡んでくるため単純にこれが正解と言えるものはないというのが実際のところです。
一般的には、いまの時代のように不景気で急激に地価が下落すると、売却損が大きくなるので地価ほど激しく上下しない家賃収入のほうがまだ比較的安全であるとも言われています。その場合は所有物件が人の出入りがある賃貸ニーズの堅調なエリアであれば地価下落の続く一定期間のみ賃貸にして、地価上昇の気配とともに売却するという「貸す」+「売る」の組み合わせの手もあります。
ただ、通常の賃貸借契約では、借主が保護されるので、売る際にも空家にして売却というのが難しくなります。その場合は、利回り物件として売るか、あらかじめ定期賃貸借にしておくという手もありますが、その分家賃を安く抑えなければなりません。定期賃貸借にしても必ずしも地価上昇の気配がそのときにやってくるともかぎらないのが、また難しいところです。

以上のように、「売る」か「貸す」かは見極めとサキヨミ力が問われる複雑な判断でもあります。いつなんどき、不測の事態が起きないとも限らないので、情報収集とデータウォッチなどで普段から判断材料を揃えておきたいものです。

いかがでしょうか。売る?貸す?あなたはどちらが「おトク」だと思いましたか?

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千葉 由里 (不動産・住生活ジャーナリスト)
千葉 由里 (不動産・住生活ジャーナリスト)

住宅やオフィスビルの企画開発・設計管理、販売、管理設計業務など7年あまりにわたる不動産全般にかかる業務を経て、住宅情報誌の編集に携わる。
住宅総合サイトの編集長を経て、売り手、買い手、両方の立場という独自の視点から、不動産の最新トレンドをもとに消費者に役立つ情報提供を行っている。

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宅地建物取引主任者

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