「賃貸」vs「購入」どっちがおトク?[20代編]
「賃貸」vs「購入」どっちがおトク?20代編
「賃貸」を続けるべきか「購入」を検討するべきか、悩んでいる方も多いはず。以前の特集「賃貸」vs「購入どっちがおトク?は、みなさん非常に興味のある内容だったため、今回はその内容を掘り下げ、「20代編」「30代編」「40代編」とそれぞれの年代ごとに紹介していきます。今回は20代の「賃貸」と「購入」について考えてみます。
20代のうちに、これからの住居を考えた場合、将来についての不確定要素が多いというのが一番の特徴です。
勤務先や子の通学先によってどこに住宅を構えるかが違ってくるでしょう。家族の人数は必要な住宅の広さや、部屋数などの間取りにも影響します。今後、さまざまな変化があるだろうということを念頭に入れた上で住宅を考えるというのが、20代でのポイントです。
早めに購入することで、住宅ローンの支払い期間が長くとれるため余裕のある返済になるというメリットがある一方で、賃貸の方がライフプランの変化に合わせやすいと言えるでしょう。
まずは、20代で購入した場合と、ずっと賃貸の場合の今後50年間、住宅にかかる費用を以下の条件でシミュレーションしてみましょう。
住宅にかかる費用の累計
上記前提での試算では、今後50年間の住居費は購入した場合で約6,400万円、賃貸の場合は約7,900万円となり、購入した場合の方が1,500万円も少なくなっています。
これは、20代での購入は、まだ年収が少ない時期であるため、あまり高額な住宅は取得できないことが影響し、賃貸との差が大きくなっています。
20代での購入は、住宅ローンの返済期間は長くとれるものの、当初支払っていける範囲内でしか借入れができないため、自己資金を多めに準備しないと、購入できる住宅の価格も低いものに限られます。上記のケースでは、年収450万円で、年収に対する年間の返済額を約25%とすると、借入れできる金額は2,600万円(金利2.5%、35年返済)です。借入額が少ないため、将来、年収が増えてくれば家計は余裕のある状態となります。
一方で、賃貸の場合には、家族の年齢などに合わせて転居し、賃料が高い期間もあることから、購入の場合よりも住居費は多くなっています。
購入した場合と、賃貸を続けていく場合の貯蓄残高の推移も比較してみましょう。
購入すると頭金等で貯蓄を使っているなどの理由から、当初の貯蓄額は賃貸の場合の方が多くなっています。途中、賃貸の家賃が高くなるため、ほぼ同水準に。それでも、退職時の貯蓄額は、賃貸の方が多くなっています。しかし、賃貸の場合には、老後にも賃料がかかり続けるという点に注意が必要。グラフからもわかるように、老後は著しく貯蓄額が減っていきます。賃貸の場合は、老後の住居費をしっかり確保しておくことが課題となります。若い頃に余裕があるので使ってしまいがち。貯蓄の管理能力も必要です。
28歳で購入すれば、新築でも40年後にはまだ68歳。一般的な平均寿命をまっとうするまでには、50年以上あります。マンションであれば大規模修繕をカバーするために毎月の修繕積立金が高くなっていくこともあります。一戸建ての場合には、大規模なリフォームや建て替えを予定し、資金準備をしておくことも大切です。
また、ライフプランが変わる要素も多いので、住み替えが必要になることもあるでしょう。買い換えをする場合には、費用や頭金が再びかかりますし、従前より高額な住宅であれば、住宅ローンの返済額も増えるでしょう。建て替えや住み替えの費用を考慮すれば、賃貸との差額も上記ほどではなくなります。
20代での購入は、住宅ローンの返済期間が長くとれるので、余裕のある返済になるというメリットがある一方で、現在の収入で希望する物件購入ができるのか、建て替えや住み替えの準備も可能かなどの課題があります。金額的な側面からの比較だけで、購入の方がお得と考えてしまうのではなく、将来の変化も想定した上で、購入してもよいか、今はまだ賃貸の方が良いのか、あなたのライフプランに合わせて検討してみてください。
20代の「賃貸」と「購入」についてシミュレーションしてみましたがいかがでしょうか?「30代編」もご紹介しております。
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高田晶子(ファイナンシャルプランナー CFP®)
1996年 独立。2001年 女性FP(ファイナンシャルプランナー)3名でFP事務所マネーカウンセリングネットWealthを立ち上げ
お金の豊かさだけでなく、お金に対して抱いている不安や不満を取り除くことによって得られる安心感こそ大切なこと。「心豊かな生活を送っていただきたい」をモットーに、個人相談業務を中心に活動。■近著
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